
定期巡回・随時対応型訪問介護看護における多職種間の情報共有の重要性
訪問介護と定期巡回・随時対応型訪問介護看護(以下、定期巡回・随時対応サービス)の違いについて説明します。
訪問介護と定期巡回・随時対応サービスは、何れも介護保険法における介護保険サービスのうち、介護給付を受けるサービスになりますが、訪問介護は「居宅サービス」のなかの「訪問サービス」になり、定期巡回・随時対応サービスは「地域密着型サービス」に分類されます。
居宅に住む利用者に対してサービス提供する介護保険サービスで、都道府県、政令指定都市、中核市が指定や監督を行います。「居宅サービス」は「訪問サービス」「通所サービス」「短期入所サービス」にさらに分類でき、訪問介護は「訪問サービス」に属します。
介護者(ヘルパー)が利用者の居宅に訪問し、利用者に対して身体介護や日常生活上の世話(生活援助)を行います。「訪問サービス」には、訪問介護の他に、訪問看護や訪問リハビリテーション、訪問入浴介護等があります。
利用者が日帰りで施設に通い、身体介護や機能訓練等を受けるサービスで、通所介護(デイサービス)や通所リハビリテーションがあります。
利用者が施設に短期間入所し、身体介護や機能訓練等を受けるサービスで、短期入所生活介護(ショートステイ)や短期入所療養介護があります。
平成18年(2006年)4月1日から新しくできたサービスで、高齢者が中重度の要介護状態となっても、住み慣れた自宅又は地域で生活をできる限り継続できるようにするため、身近な市区町村で提供されるのが適当なサービスとして創設されました。
そのため「地域密着型サービス」は、市区町村が指定や監督を行います。
定期巡回・随時対応サービスは「地域密着型サービス」の1つで、平成24年(2012年)に創設されました。
「地域密着型サービス」には、定期巡回・随時対応サービスの他に、夜間対応型訪問介護、小規模多機能型居宅介護、複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)等があります。
訪問介護と定期巡回・随時対応サービスの対象者は以下のようになります。
対象者は要支援または要介護認定を受けている被保険者になります(要支援の場合は、介護予防訪問介護)。訪問介護は訪問介護事業所の指定を受けた地域以外の被保険者も利用できます。
対象者は要介護認定を受けている被保険者になり、要支援認定を受けている被保険者は対象外です。また、定期巡回・随時対応サービスは、定期巡回・随時対応サービス事業所の指定を受けた地域の被保険者のみが利用できます(一部例外あり)。
介護保険における被保険者は、年齢により第1号被保険者と第2号被保険者に分けられています。第1号被保険者は、65歳以上の住民を指し、第2号被保険者は、40歳以上65歳未満の医療保険加入者とされています。
日常生活の中でどの程度の介護・介助を必要とするのか、介護の度合いをあらわす指標です。
寝たきりや認知症等で常時介護を必要とする状態を「要介護」と呼び、さらに1~5までの数字で重度を示します(数字が大きいほど重度)。
家事や身支度等の日常生活に支援が必要であり、特に介護予防サービス(介護予防訪問介護等)が効果的な状態を「要支援」と呼び、1~2の数字で重度を示します(数字が大きいほど重度)。
訪問介護と定期巡回・随時対応サービスのサービス内容は以下のようになります。
介護者(ヘルパー)が利用者の居宅に訪問し、利用者に対して「身体介護」や「生活援助」を行います。
「身体介護」は食事や入浴、更衣、移動・移乗等の利用者の身体に直接触れて行うサービスのことで、「生活援助」は掃除や洗濯、調理等の日常生活の援助にあたるサービスになります。
訪問介護で提供できるサービス内容については、厚生労働省が発出した「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」(老計10号)に示されています。
訪問介護は、ケアマネジャーの作成する「居宅介護支援計画書」にもとづき、1か月間のサービス提供予定(内容、回数、時間)はあらかじめ決まっており、介護員は予定通りに実施します。
また、給付管理の観点(後述)もあって、原則的に予定外のサービス提供は行いません。
訪問介護では、1人の利用者に対し1日複数回のサービス提供する際に、サービスの間隔を2時間以上空けることが求められています(20分未満の身体介護を除く)。このルールが導入された背景には、不適切な報酬受給の防止やサービスの透明性の確保等があります。
もし、訪問介護事業所が1人の利用者に対し、前回のサービス提供から2時間以内に再びサービス提供を行った場合は、それぞれのサービスの所要時間を合算します。訪問介護事業所は、サービスの所要時間が合算されると受け取れる単位数が減ってしまうこともあり、「2時間ルール」を順守しています。
定期巡回・随時対応サービスには「定期巡回サービス」「随時対応サービス」「随時訪問サービス」「訪問看護サービス」の主に4つのサービスがあり、定期的な訪問に加え、緊急時の随時対応及び随時訪問、訪問看護によるアセスメント等を行い、利用者の在宅生活を24時間365日通して支援します。
また、定期巡回・随時対応サービスは訪問介護と異なり、サービス内容(老計10号の示す内容に限る)、時間、回数について特に制限はありません。そのため、訪問介護のような「2時間ルール」も存在しません。
なお、定期巡回・随時対応サービスと訪問介護(通院等乗降介助除く)、夜間対応型訪問介護、訪問看護(医療保険除く)は併用できません。ただし、後述の夜間対応型のみ、訪問介護、訪問看護と併用できます。
訪問介護員等が定期的に利用者の居宅を巡回して日常生活上のお世話を行います。
利用者はケアマネジャーと計画作成責任が共同作成するケアプランに従って、身体介護を中心とした短時間のサービスを1日複数回受けることができます。
緊急時に利用者または利用者の家族からの通報をオペレーターが受け付けます。
オペレーターは、通話内容や利用者の心身の状況、置かれている環境等を把握した上で、必要に応じて、相談援助、訪問介護員等の訪問対応等を指示します。
利用者からの通報を受けたオペレーターの指示で、訪問介護員が利用者の居宅に訪問し、サービスを提供します。
主治医の指示があった場合に看護職員等が利用者の居宅を訪問して療養上のお世話、または必要な診療の補助を実施します。
なお、介護サービスのみ(訪問看護サービスを利用しない)の場合でも、初回アセスメントや月1回のモニタリングを行います。
4-2-5. 夜間対応型(定期巡回・随時対応型訪問介護看護Ⅲ)
令和6年(2024年)4月より夜間帯(18:00~翌8:00)のみを対象に、定期巡回サービス、随時対応サービス、随時訪問サービスを提供します。
訪問介護と定期巡回・随時対応サービスの単位数は以下のようになります。
訪問介護の単位数は、利用者に提供するサービスの内容、具体的には「身体介護」と「生活援助」で異なり、「身体介護」の方が「生活援助」より高く、またサービス提供時間が長くなるほど高くなります。
サービス内容、回数、時間に応じて単位数が上がるため、ケアマネジャーは利用者の区分支給限度額(1月あたりの上限単位数、上限を超えた単位数分は100%自費負担)を超えないよう、給付管理の観点も含めてサービス内容を検討、作成します。
定期巡回・随時対応サービスの単位数は、要介護ごとに異なる月額包括報酬になっており、サービス内容、時間、回数に関わらず、ひと月の単位数は一定です。また、要介護度が高くなるほど、単位数は高くなります。
さらに、定期巡回・随時対応サービス事業所の類型である「一体型」と「連携型」で単位数が異なります。「一体型」は「訪問看護サービス」を自事業所内(同敷地内)で提供している定期巡回・随時対応サービス事業所になり、「連携型」は「訪問看護サービス」を自事業所内で実施せず、他の訪問看護事業所と連携して提供している定期巡回・随時対応サービス事業所になります。
定期巡回・随時対応サービスの単位数は「月額包括報酬」になりますが、月途中の開始・終了や、短期入所生活介護や介護施設への入所・退所があった場合は「日割り」で算定します。また、通所介護等の「通所サービス」を利用した場合は、定期巡回・随時対応サービスの単位数から一定の単位数が「減算」されます。
日割り 月途中の開始・終了、短期入所生活介護や介護施設等への入所・退所
減算 「通所サービス」の利用
訪問介護と定期巡回・随時対応サービスの職種と人員配置基準は以下のようになります。
訪問介護には以下の職種があり、それぞれ必要な人員を配置する必要があります。
利用者の居宅に訪問してサービス提供を行います。
1月あたり常勤換算2.5人以上を配置する必要があります。
また、以下の何れかの資格要件を満たす必要があります。
・介護福祉士
・実務者研修修了者
・初任者研修修了者
・旧介護職員基礎研修過程修了者
・旧ホームヘルパー1級課程修了者
・旧ホームヘルパー2級課程修了者
・看護師・准看護師
利用者・関係者間の調整・窓口、サービス担当者会議への参加や、訪問介護計画書の作成、事業所の管理等を行います。
常勤職員で専ら訪問介護業務に従事する者のうち、1人以上を配置する必要があり、さらに利用者数(前3か月間の平均値)が40人を超えるごとに1人以上追加で配置する必要があります。
また、以下の何れかの資格要件を満たす必要があります。
・介護福祉士
・実務者研修修了者
・旧介護職員基礎研修課程修了者
・旧ホームヘルパー1級課程修了者
・実務経験3年以上の介護職員初任者研修修了者(旧ホームヘルパー2級課程修了者)
※実務経験3年以上の介護職員初任者研修修了者またはホームヘルパー2級課程修了者が責任者となった場合は減算
事業所全体の管理や運営を行います。
常勤専従で1人の配置が必要で、資格要件はありません。
なお、管理者がその責務を果たせる場合、敷地内外の他の介護保険サービスの管理者と兼務できます。
期巡回・随時対応サービスには以下の職種があり、それぞれ必要な人員を配置する必要があります。
利用者の居宅に訪問してサービス提供を行います。
そのうち、「定期巡回サービス」を行う職員は、サービス提供するために必要な数以上が必要で、「随時訪問サービス」を行う職員は、常時1人以上の配置が配置です。
オペレーターや他の職種と兼務できます。
また、以下の何れかの資格要件を満たす必要があります。
・介護福祉士
・実務者研修修了者
・初任者研修修了者
・旧介護職員基礎研修
・旧訪問介護員1級
・旧訪問介護員2級
利用者からの通報を受け、相談対応や介護員の訪問手配を行います。
サービス提供の全時間帯を通じて1人以上の配置が必要で、且つ1人以上は常勤の看護師、介護福祉士等でなければなりません。
利用者の処遇に支障がない範囲で、当該事業所の他職種及び同一敷地内の他の事業所・施設等の職種と兼務できます。
また、以下の何れかの資格要件を満たす必要があります。
・介護福祉士
・看護師
・医師
・保健師
・准看護師
・社会福祉士
・介護支援専門員
・1年以上訪問介護のサービス提供責任者として従事した者
利用者・関係者間の調整・窓口、サービス担当者会議への参加、定期巡回・随時対応サービス計画書の作成、事業所の管理等を行います。
定期巡回・随時対応サービス従業者で1人以上の配置が必要です。
オペレーターや他の職種と兼務できます。
また、以下の何れかの資格要件を満たす必要があります。
・介護福祉士
・看護師
・医師
・保健師
・准看護師
・社会福祉士
・介護支援専門員
訪問看護サービスやアセスメントを行います。
定期巡回・随時対応サービス事業所の類型が「一体型」の場合、事業所内に配置しなければならず、保健師、看護師、准看護師あわせて2.5人以上、うち1人以上は常勤の保健師又は看護師が必要です。なお、併設している訪問看護事業所と合算することができます。
常時オンコール体制を確保する必要があります。
オペレーターと兼務できます。
また、以下の何れかの資格要件を満たす必要があります。
・保健師
・看護師
・准看護師
・理学療法士(PT)
・作業療法士(OT)
・言語聴覚士(ST)
事業所全体の管理や運営を行います。
常勤専従で1人の配置が必要で、資格要件はありません。
なお、管理者がその責務を果たせる場合、敷地内外の他の介護保険サービスの管理者と兼務できます。
定期巡回・随時対応サービスの職員(職種)は、自事業所と併設・同一敷地内の訪問介護、夜間対応型訪問介護、訪問看護の職員(職種)と兼務することができます。
訪問介護と定期巡回・随時対応サービスは、何れも地域に住む利用者にサービス提供を行いますが、その内容や単位数、人員配置基準等は異なります。
何れのサービスにも特長があり、例えば定期巡回・随時対応サービスは1日複数回の短時間のサービス提供や24時間365日の随時対応・随時訪問等のニーズに対応しますが、1回の訪問が長時間であったり、通所介護を週3回以上利用する場合は、訪問介護のほうが適していることもあります。
利用者の状態やニーズ等に応じて、最適なサービスを提案できるよう、サービスの特長や内容等について、正しく理解しておくことが重要です。
定期巡回・随時対応サービスの詳細について、以下の資料にまとめています。
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