
【定期巡回】「枠がなくて開設できない」を防ぐ!介護保険事業計画に自社を盛り込ませる戦略的アプローチ
高齢者の暮らしを支える重要な住まいとして、全国で開設が進む住宅型有料老人ホーム。
これまで比較的柔軟な運用が行われてきましたが、厚生労働省の検討会において、サービス提供体制の見直しに向けた具体的な議論が進められています。
特に注目されているのが、これまでの「届出制」から、よりルールを明確化した「登録制」への変更案です。
「自社の訪問介護やケアマネジャーと連携して運営してきたけれど、今後のルール見直しでどんな影響があるのだろうか」
「夜間のオンコール対応や日中の人員配置についての検討内容を聞いて、現場の負担が増えないか心配…」
このように、今後の見通しについて気になっている施設管理者や介護事業主の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、厚生労働省の検討会(※)で出されている最新の案をもとに、住宅型有料老人ホームの「登録制」で何が変わろうとしているのか、そしてこれからの運営で知っておきたい対応策のヒントについて分かりやすく解説します。
出典:厚生労働省「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会(第9回)資料」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76302.html
1. 住宅型有料老人ホームの「登録制」検討で何が変わる?
今回の見直し案において、厚生労働省が提示している大きな柱が「登録制の導入」と「登録基準の整備」です。
現在、住宅型有料老人ホームは自治体への「届出」による運営が主流ですが、将来的には定められた「登録基準」を満たすことが求められる方向で検討が進んでいます。
現行と検討案の違いは以下の通りです。
| 項目 | 現行(届出制) | 検討されている登録制案 |
| 手続き | 行政への「届出」 | 登録基準を満たした上での「登録」 |
| 拘束力 | 指導指針等に基づく適正化 | 法令上の基準(原則、満たさないと運営不可) |
| 監督体制 | 指導指針沿った指導 | 登録基準に基づく実効性のある指導・監督 |
具体的にどのような内容が検討されているのか、重要な3つのポイントに整理して見ていきましょう。
(1)「届出制」から「登録制」へ:法的ルールの厳格化案
これまでは国の指導指針などをもとに運営の適正化が図られてきましたが、検討されている「登録制」のもとでは、登録基準を満たしていない事業者は原則として運営できなくなる仕組みが想定されています。
法令上の位置付けが明確になることで、行政による指導や監督がより実効性のあるものになると見込まれています。
(2)「囲い込み防止」と「ケアマネの独立性」の義務化案
特定の介護サービス事業者へ利用者を誘導する、いわゆる「囲い込み」を防ぐためのルールを登録基準に盛り込む案が示されています。
●利用条件の制限案:併設や隣接する関連事業者のサービス利用を入居条件とすることを認めない方針
●自由な選択の阻害防止案:かかりつけ医やケアマネジャーの変更を強要することや、特定の事業者を利用した場合に家賃を安くするような不適切な誘導を認めない方針
●独立性の担保案:ケアマネジャーが公平・中立にケアプランを作成できるよう、契約や作成の手順書・ガイドラインの策定、管理者への研修などを事業者に求める方針
また、入居を検討している方に対して、近隣にある他の介護サービス事業所の情報を提供することも求められる案となっています。
(3)日中常駐・夜間オンコール体制など人員要件の強化案
入居者の方々に安心して暮らしていただくため、職員の配置についても基準を設ける検討がなされています。
●日中の体制案:原則として夜間を除き職員が常駐すること(管理者や生活相談員を1名以上配置)
●夜間の体制案:必要に応じて職員が駆けつけられる「オンコール体制」の確保を義務付ける方針
夜間のオンコール対応など新たに義務化が検討されている項目については、人手不足に悩む現場の実情に配慮し、一定の猶予期間(経過措置)を設ける案もあわせて出されています。
「登録制」の導入や各種基準の明確化案が示されたことで、住宅型有料老人ホームの経営者や施設管理者にとって、今後の運営体制の見直しが必要となる場面が出てくると想定されます。特に懸念される主な課題は以下の2点です。
(1)併設訪問介護・ケアマネジメントの運用見直し
これまで住宅型有料老人ホームでは、併設されている自社の訪問介護事業所や居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)と連携し、一体的なサービス提供を行うケースが多く見られました。
しかし、併設サービスの利用を入居条件とすることの制限案や、ケアマネジャーの独立性担保に向けた手順書・ガイドラインの策定案などが盛り込まれると、以下のような対応が必要になります。
●入居者に対して近隣の他事業所に関する情報を公平に提供する仕組みづくり
●特定事業者の利用を前提としたパッケージ的なサービス案内の見直し
●ケアマネジメント契約と入居契約の明確な区分けと、説明責任の履行
特定の事業者に依存しない「利用者の自由選択」を前提とした透明性の高い運用へのシフトが求められることになります。
(2)夜間オンコール対応によるスタッフの負担と人手不足
人員要件の強化案として「夜間のオンコール体制の確保」が挙げられています。
すでに夜勤スタッフや宿直を配置している施設であれば問題ありませんが、夜間の人員が手薄なホームの場合、オンコール(緊急呼出)を担当するスタッフの負担増が懸念されます。
●「夜間に頻繁に呼び出され、スタッフが疲弊してしまう」
●「オンコール対応ができる看護師・介護職員の確保が難しい」
●「夜間対応のための人員を追加採用しようにも、採用コストが膨らんでしまう」
このように、深刻な人手不足が続く介護業界において、自社単独で24時間・365日の安心体制を維持し続けることには少なくないハードルが存在します。
住宅型有料老人ホームにおいて定期巡回サービスとの連携や併設を成功させるためには、事前の準備と運用の工夫が欠かせません。
(1)地域のニーズに合わせた柔軟なサービス設計
住宅型ホームの入居者だけでなく、地域の在宅要介護者にも対応できる形で定期巡回サービスを展開することで、地域包括ケアの拠点としての価値が高まります。
自ホームの入居者数だけに依存しない安定した事業運営を目指すことがポイントです。
(2)ICT・業務支援システムを活用した情報共有の効率化
定期巡回サービスでは、短時間の訪問が頻繁に行われるほか、随時コールの受付や駆けつけの記録など、日々の情報共有が非常に重要になります。
紙の記録や手動での情報伝達に頼っていると、現場の事務負担が増大し、連携ミスにもつながりかねません。
スマートフォンやタブレットを活用した業務支援システム(ICT)を導入し、リアルタイムでの情報共有・計画書作成・記録管理を自動化・効率化することが、現場の負担を軽減し成功させるカギとなります。
おわりに
厚生労働省で議論が進む住宅型有料老人ホームの「登録制」導入案は、不適切な運用の是正を目指すとともに、入居者が安心して過ごせる環境を整えるための見直しと言えます。
「囲い込み規制」や「夜間を含めた人員・オンコール体制」への対応に不安を感じている事業所様にとって、24時間柔軟に対応できる「定期巡回・随時対応サービス」の活用や併設は、非常に有力な選択肢の一つです。
制度の最新動向を把握しながら、入居者にとってもスタッフにとっても安心できる運営体制の構築を進めていきましょう。
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