利用者の生活を支える中で、「介護保険制度が今後どうなっていくのか」という将来への不安を感じることもあるのではないでしょうか。
特に今、介護保険の根幹である「給付と負担のあり方」について、非常に重要な議論が水面下で進んでいます。
この議論は、単に利用者の負担が増えるという話に留まりません。
介護サービスの利用のされ方、現場の経営、そして私たちの働き方にまで、大きな影響を及ぼす可能性を秘めています。
この記事では、現在検討されている3つの最重要論点をピックアップし、それが皆さんの事業所や利用者にどんな「本当の影響」をもたらすのかを、わかりやすい言葉で解説します。
2040年という未来を見据え、制度改正の波に負けずに安定したサービスを提供し続けるためのヒントを、一緒に探っていきましょう。
【目次】1.制度の根幹に関わる!「利用者負担割合」の拡大検討 1-1. 現行の「1割・2割・3割負担」の判定基準とは? 1-2. なぜ「2割負担の対象拡大」が検討されているのか?(全世代型社会保障の考え方) 1-3. 利用者・事業所への影響を和らげる「2つの配慮措置」2.【柱2:物への投資】サービス継続・災害対策への20万円補助
2-1. 現行「10割給付」のケアマネジメントに利用者負担は導入されるのか? 2-2. 注目すべき「住宅型有料老人ホーム」のケアマネジメント見直し
2-3. ケアマネの業務負担を軽減する「給付管理業務」の利用者負担導入案3.【柱3:仕組みへの投資】補助率4/5! 強力なテクノロジー導入・経営改善支援
3-1. 補足給付の見直しで何が変わる?
3-2. 食費・居住費の負担の「公平化」に向けた所得区分のさらなる細分化 3-3. ショートステイや多床室の負担も見直し対象にまとめ:制度改正の波を乗りこなし、安定したサービス提供を
本記事の関連資料はこちら!

1.制度の根幹に関わる!「利用者負担割合」の拡大検討
介護保険サービスを利用する際、費用の一部を自己負担する仕組みは、ご存じの通りです。
現在、ほとんどの方は1割負担ですが、所得に応じて2割または3割負担となる方がいます。
この「利用者負担割合の判定基準」について、見直しの議論が進められています。
なぜ今、この制度の根幹に関わる部分が見直されようとしているのでしょうか。
1-1. 現行の「1割・2割・3割負担」の判定基準とは?
まず、現在の利用者負担の仕組みを確認しておきましょう。
●1割負担:ほとんどの利用者の方が該当します。
●2割負担:「一定以上の所得がある方」(被保険者の上位約20%相当)が対象です。単身世帯で年金収入などが280万円以上かつ合計所得金額が160万円以上の場合などです。
●3割負担:「特に所得の高い現役並みの所得がある方」(利用者に占める割合で約3.9%)が対象です。単身世帯で年金収入などが340万円以上かつ合計所得金額が220万円以上の場合などです。
この基準について、見直しの方向性として最も注目されているのが、「2割負担の対象を拡大する」という点です。
1-2. なぜ「2割負担の対象拡大」が検討されているのか?(全世代型社会保障の考え方)
この見直しの背景にあるのは、国が掲げる「全世代型社会保障の基本理念」という考え方です。
これは、「年齢に関わりなく、能力に応じて負担し、支え合う」ということを目指しています。
超高齢社会が進む中で、介護サービスの費用は増大し続けており、このままでは現役世代(特に子育て世代)の保険料負担が過度に重くなってしまうことが懸念されています。
そのため、「所得(収入)と資産(貯蓄)の両方から見て、比較的負担能力があると考えられる方」に、より公平に負担を求めるべきではないか、という議論がされています。
資料では、例えば2割負担の対象を所得上位約25%〜30%まで広げる案などが提示されています。
この変更が実現すれば、2割負担となる方の数は最大で約35万人増えるという試算もあり、介護サービスを利用する皆さんの利用者層に大きな変化が起こる可能性があります。
利用者の「家計の事情」が、サービス利用を左右する度合いが強まるかもしれないのです。
1-3. 利用者・事業所への影響を和らげる「2つの配慮措置」
利用者の負担が急激に増えることによる「利用控え」や「介護状態の重度化」のリスクは、現場で働く私たちにとって最も心配な点です。
このため、2割負担の対象を拡大する際には、以下のような「配慮措置」を組み合わせることが検討されています。
①負担増加の上限を設定する
新たに2割負担となる方の1ヶ月の負担増加額について、当分の間、最大で7,000円に抑えるという案です。
これにより、急激な負担増を抑制します。
②預貯金額を考慮する
収入が基準を満たしても、預貯金などの金融資産が一定額(例:単身で300万円〜700万円未満)を下回る場合は、申請によって1割負担に戻すという案が検討されています。
特に②は、「所得だけでは見えない真の負担能力」を考慮するという点で画期的ですが、預貯金の確認(自己申告や金融機関への照会)といった自治体側の新たな事務負担が増えるという課題も指摘されています。
この議論の結論は、2027年度の制度改正(第10期介護保険事業計画期間の開始)までに出される予定です。
2.ケアマネの仕事と経営に直結!給付のあり方の重要論点
次に、介護サービスの「要」であるケアマネジャー(介護支援専門員)の業務に関わる重要な議論です。
現在、居宅介護支援(ケアプラン作成など)の費用は、全額(10割)が介護保険から給付されており、利用者の自己負担はありません。
この仕組みは、制度創設時、利用者が新しいサービスであるケアマネジメントを積極的に利用できるように導入されました。
しかし、制度が定着した今、「他のサービスは自己負担があるのに、ケアマネジメントだけが10割給付で良いのか?」という議論が長年の懸案となっています。
2-1. 現行「10割給付」のケアマネジメントに利用者負担は導入されるのか?検討会では、ケアマネジメントに利用者負担を導入すべきか、引き続き慎重に検討すべきか、両方の意見が出されています。
|
利用者負担「導入に積極的な意見」
|
利用者負担「導入に慎重な意見」
|
|
介護制度全体の持続可能性の観点から必要。
|
利用者にとって負担増となり、サービスの利用控えや重度化につながる懸念。
|
|
他のサービスや施設サービス利用者との公平性を確保すべき。
|
質が高く適切なケアマネジメントの利用機会が失われる懸念。
|
|
利用者がケアプランへの関心を高めることで、質の向上につながる。
|
ケアマネジャーの公平性・中立性の確保が難しくなる。
|
この議論も、
2027年度の制度改正までに結論を出すこととされています。
もし利用者負担が導入されれば、当然ながら
居宅介護支援事業所の収入源や
経営戦略に大きな影響が出ます。
また、利用者が費用を抑えるためにセルフケアプランを選ぶようになれば、適切なケアマネジメントを受けられなくなり、サービスの質の低下につながるリスクも指摘されています。
2-2. 注目すべき「住宅型有料老人ホーム」のケアマネジメント見直し
すべてのケアマネジメントに利用者負担を導入することには高いハードルがありますが、特に
「住宅型有料老人ホーム」に入居する方のケアマネジメントについては、
利用者負担を求める方向で検討が進んでいます。
これは、住宅型有料老人ホームが、実際には施設サービスに近い機能を持っているにもかかわらず、「居宅」サービスとして扱われていることによる公平性の問題が背景にあります
●施設サービス(特養など):ケアマネジメント費用は施設サービス費に含まれ、実質的に自己負担があります。
●住宅型有料老人ホーム:ケアマネジメント費用は自己負担なし(10割給付)です。
資料では、住宅型有料老人ホームの入居者にケアマネジメントの費用負担を求めることで、施設サービスとの公平性を図るべきだとされています。
また、一部のホームで、運営事業者が関連するケアマネ事業所を利用者に誘導し、
過剰なサービスを提供する「
囲い込み」
が問題視されており、利用者負担の導入と合わせて、
ケアマネジャーの独立性・中立性を確保するための規制強化も検討されています。
2-3. ケアマネの業務負担を軽減する「給付管理業務」の利用者負担導入案
ケアマネジャーの皆さんは、本来の専門的な業務(アセスメント、プラン作成など)以外に、
給付管理のような事務的な業務に多くの時間を割いています。
この給付管理業務について、「介護サービス事業所の請求事務の代替としての性格が強い」ことを踏まえ 、ICT化が進むまでの間、事務に要する
「実費相当分」を利用者負担として求める案も議論されています。
これは、
ケアマネジャーが本来の専門業務に集中できる環境整備を後押しするための案ですが、一方で
制度の複雑化や
利用者への説明負担が増えるという懸念も指摘されています。
3.施設系サービス必見!低所得者向け「補足給付」の精緻化(せいちか)施設サービスやショートステイ(短期入所)を提供する事業所の皆さんにとって、低所得者の食費・居住費(滞在費)の負担を軽減する「
補足給付」の議論は極めて重要です。
これは、介護保険の財源から給付される「特定入所者介護サービス費」のことであり、施設の利用者に占める割合が高く、制度のあり方によって利用者の実質的な負担や利用動向に影響が出るためです。
3-1. 補足給付の見直しで何が変わる?
補足給付は、住民税非課税世帯の方向けに、所得に応じて食費や居住費の負担限度額を設定し、基準費用額(標準的な費用)との差額を給付する仕組みです。
資料では、この補足給付についても「
能力に応じた負担」とする観点から、
所得段階をさらに細分化し、負担の公平化を図る方向性が示されています。
3-2. 食費・居住費の負担の「公平化」に向けた所得区分のさらなる細分化
2021年度(令和3年度)の改正で、
補足給付の所得段階は、住民税非課税世帯の中で「第3段階」がさらに「第3段階①」と「第3段階②」に
細分化されました。
今回の見直し案では、
この第3段階をさらに2つに分け、合計4つの区分(第3段階①ア、イ、第3段階②ア、イ)とし、
所得が上がるにつれて利用者負担を上乗せする案が提示されています。
|
現行の所得段階(住民税非課税世帯)
|
年金収入等(単身・目安)
|
検討されている見直し案
|
|
第2段階
|
80.9万円以下
|
変更なし
|
|
第3段階①
|
80.9万円超~120万円以下
|
第3段階①ア、イに細分化
|
|
第3段階②
|
120万円超
|
第3段階②ア、イに細分化
|
この目的は、同じ所得段階内でも収入と支出のバランスを考慮し、より負担能力に応じた負担とする「
制度の精緻化(せいちか)」にあります。
3-3. ショートステイや多床室の負担も見直し対象に
補足給付の見直しは、ショートステイ(短期入所)にも同様に適用されます。
また、施設入所における
多床室(大部屋)の居住費負担についても、在宅で暮らす方との公平性の観点から見直しが議論されています。
これらの変更は、特に低所得の利用者が多い施設系サービスやショートステイを提供する事業所にとって、利用者へのサービス説明や費用に関する相談業務の変更に直結します。
今後の動向を注視し、利用者が安心してサービスを継続できるよう、情報提供と相談体制を整えることが求められます。
まとめ:制度改正の波を乗りこなし、安定したサービス提供を2040年を見据えた介護保険制度の改正に向け、給付と負担のあり方が大きな議論の的となっています。
特に「
利用者負担割合の拡大」「
ケアマネジメントの給付のあり方」「
補足給付の精緻化」の3つの論点は、私たちの事業所の利用者層や経営、そして業務内容そのものに深く関わるものです。
制度の持続可能性を確保しつつ、「能力に応じた負担」という公平性の実現を目指す国の方向性は変わりません。
この大きな変化の波を乗りこなし、
質の高いサービスを安定的に提供し続けるためには、最新の制度情報をいち早く把握し、
利用者への適切な情報提供と
事業所の柔軟な経営戦略が不可欠です。
特に
定期巡回・随時対応サービスは、
重度化しても在宅で暮らし続けるための要となるサービスです。
利用者の負担増や利用控えの不安に対し、サービスを適切に届けるための体制づくりが、今後ますます重要になります。
私たち「
スマケア」は、こうした制度改正の動向を常にウォッチし、現場の皆様が利用者へのケアに集中できるよう、業務の効率化と情報提供を通じて皆様をサポートしてまいります。
\制度改正の準備を始めてみませんか?/
定期巡回・随時対応サービス業務支援システム「スマケア」は、制度の変更にいち早く対応し、現場の負担を大幅に軽減します。
まずは、制度改正を見据えた効率化のヒントが詰まった資料をぜひダウンロードしてください。

ICT活用や「スマケア」の詳細にご興味のある方、定期巡回の開設でお悩みの方は、ぜひ以下お問い合わせフォームより無料でご相談ください。

ご興味のある方は、お電話、またはお問い合わせフォームよりご連絡をお待ちしております。
メルマガ登録
定期巡回に係わる様々なトピックスやお役立ち情報をメルマガにて配信しております。ご興味のある方はぜひ以下ページよりご登録ください!
お問い合わせ
ご不明な点がございましたらスマケアサポートデスクまでご連絡ください!TEL:03-6630-7485 (平日 9:00〜18:00)