
定期巡回事業所も必読!ケアマネジメント最新『手引き』とは?
少子高齢化が進む中、介護業界は深刻な人材不足という課題に直面しています。
特に、従来の訪問介護サービスでは、ヘルパーの確保が難しく、事業の継続に不安を抱える事業所も少なくありません。
今回は、そうした状況を打破すべく、訪問介護サービスを廃止し、「定期巡回・随時対応サービス」への完全移行を成功させた社会福祉法人小田原福祉会より、理事長の時田様と定期巡回・随時対応サービス事業所 管理者の露木様にお話を伺いました。
地域に貢献し続けるために下した大きな決断の背景、多くの関係者を丁寧に巻き込んでいった具体的なプロセス、そして事業転換によってもたらされた効果について、詳しくご紹介します。
◆法人概要
神奈川県小田原市
社会福祉法人 小田原福祉会様
HP:https://junseien.jp/
写真右:時田 佳代子様 (社会福祉法人小田原福祉会 理事長)
写真左:露木 智裕様 (潤生園ホームヘルプサービス 管理者)
ーーーまず初めに、法人全体の事業概要と、大切にされている理念についてお聞かせいただけますでしょうか。
(時田様)
はい。私たち小田原福祉会は、施設サービスとして広域型の特別養護老人ホームと地域密着型の特別養護老人ホームを運営していますが、法人の大きな特徴は在宅サービスにあります。
現在も法人全体の事業収益の約70%を在宅サービスが占めています。
これは、法人の設立以来、「地域社会の中で最後まで暮らし続けること」を大きな柱としてきたからです。
実は、法人ができた1970年代後半は、まだ在宅サービスという制度自体がほとんどありませんでした。
しかし、地域で暮らす方々の厳しい状況を目の当たりにし、施設のボランティアとしてデイサービスやショートステイを自発的に始めたのが原点です。
私たちの実践が先にあり、後から行政の制度がついてきた、という自負を持って、一貫して地域に貢献し続けることを目指しています。
ーーー次に、現在運営されている定期巡回・随時対応サービス事業所の状況について、より詳しく教えていただけますか?
(露木様)
はい。現在、利用者様は「定期巡回・随時対応型訪問介護看護Ⅱ(連携型)」と「定期巡回・随時対応型訪問介護看護Ⅲ(夜間帯)」を合わせて約100名いらっしゃいます。
利用者様の状態に合わせて柔軟に対応しており、例えば退院直後で頻回な支援が必要な方は手厚いⅡで受け入れ、状態が落ち着いたら夜間の安心のためのⅢに切り替える、といった運用をしています。
スタッフは総勢で約30名、常勤換算で約17名です。
日中は市内を3つのエリアに分けて3ルートで、夜間は1ルート体制で効率的に訪問しています。
事業を一本化したことで、以前は広範囲に点在していた利用者様が特定のエリアに集中し、密度が濃くなりました。
今では1台の車を止めれば、その場で3〜4件回れるほど効率的に運営できるようになり、移動時間のロスが大幅に削減されています。
そんな折、外部の方から
「定期巡回サービスの創設に尽力された会長(創設者)の足元が、訪問介護と並行している今のままで良いのですか」
と指摘されたことも、私の心を大きく動かしました。
ーーー経営的な課題だけでなく、理念に基づいたご決断だったのですね。
はい。これは経営の視点だけではできない意思決定です。
本当の意味での「自立支援」とは何かを突き詰めて考えました。
前月にケアマネジャーが翌月の生活を決めるという従来のやり方では、日々変化する利用者様の状態に即したサービスは提供できません。
毎日利用者様に会っているヘルパーが、その方の状態をアセスメントし、必要なサービスを判断し、提供すべきだ。それを実現できるのが定期巡回サービスだと確信したのです。
ーーー移行プロセスについて、職員の皆様や、既存の利用者様・ケアマネジャー様をどのように巻き込んでいったのか、特に詳しく教えてください。
(時田様)
定期巡回に一本化した場合の収支シミュレーションを提示し、「事業転換は法人の経営安定化に繋がり、ひいては職員の処遇改善にも繋がる」という経営的なメリットを明確に伝えました。
ーーー現場の職員の方々への説明は、管理者である露木様が中心に進められたのでしょうか。
(露木様)
はい。職員に対しては、理念的な側面と経営的な側面の両方から、何度も説明の場を設けました。
私自身、一度法人を離れ、外の厳しい世界を見てきたからこそ、この法人の理念の素晴らしさ、そして定期巡回というサービスの可能性を自分の言葉で熱く語りました。
長年訪問介護に携わってきた職員の中には、やり方が変わることへの戸惑いやICTへの苦手意識から不安を口にする者もいましたが、「皆で一緒に乗り越えよう」と伝え続けました。
ーーー利用者様への説明で、最も心を砕かれたのはどのような点ですか?
(露木様)
何よりも、利用者様の不安を取り除くことです。
まずは長年お付き合いのあるケアマネジャー一人ひとりに直接お会いして、法人としての方針転換の背景と目的を丁寧に説明し、理解と協力を求めました。
その上で、必ずケアマネジャーに同席いただき、利用者様とご家族のもとへ伺いました。
「サービスが変わる」のではなく、「より安心できるサービスになる」ということを、具体的な例を挙げて説明しました。
(露木様)
当初100名ほどいらっしゃった訪問介護(夜間対応型訪問介護含む)の利用者様のうち、約7割の方が定期巡回サービスに移行してくださいました。
中には、どうしても馴染めないという方もいらっしゃいましたが、その場合は他の訪問介護事業所への引き継ぎを責任を持って行い、決して見放すことはしない、という姿勢を貫きました。
ーーーケアマネジャーや、連携する訪問看護ステーションとの関係構築で工夫された点はありますか?
(露木様)
ケアマネジャー向けには、事業所で説明会を1日に3回開催するなど、とにかく顔を合わせて話す機会を多く作りました。
当初は「定期巡回は重度者向け」「生活援助はやってくれない」といった誤解もありましたが、アセスメントに基づいて必要なサービスは柔軟に提供することを伝え、丁寧に誤解を解いていきました。
また、サービスの鍵となる訪問看護との連携も不可欠です。
以前は3〜4件だった連携先の訪問看護ステーションを一軒一軒訪問し、私たちの想いを伝え、今では12〜13件のステーションと緊密に連携できる体制を築くことができました。
この地道な関係構築が、現在の安定したサービス提供の基盤となっています。
ーーー事業転換による変化や効果について、最も良かったと感じる点を教えてください。
(時田様)
大きな効果は、ヘルパーのやりがいが質的に変化したことです。
「利用者様の人生をチームで丸ごと支えている」という、点ではない面での支援に誇りを持ち、専門職としての意識が高まっているのを感じます。
(露木様)
利用者様にとっては「何かあっても、いつでも来てくれる」という安心感が一番大きいと思います。
職員にとってもチームで情報を共有し、相談しながら動けるため、一人で抱え込むことがなくなり、精神的な負担が減りました。
ーーーチームケアの実践という点では、「スマケア」の活用が大きな効果を上げていると伺いました。
(露木様)
まさにその通りです。
私たちの事業所では、スマケアを通じて、ヘルパーが記録した日々の様子が、リアルタイムに関係者の皆様へ共有される仕組みを構築しています。
具体的には、ヘルパーが入力した記録が、即座に担当のケアマネジャー様や連携先の訪問看護ステーションの皆様にも共有されます。
これにより、電話やFAXでの煩雑なやり取りをしなくても、関わる専門職全員が常に利用者様の最新の状況を把握できるのです。
ーーーそれは画期的なチームケアですね。
(露木様)
はい。例えば、日中のヘルパーが気づいた利用者様の小さな体調の変化をスマケアに記録すれば、夕方に訪問する看護師さんがその情報を事前に把握した上で対応できます。
情報が筒抜けになることで、職種間の連携が飛躍的にスムーズになり、まさに「地域で一つのチーム」として利用者様を支えることができています。
この透明性の高い情報共有が信頼に繋がり、今では地域のケアマネジャー様や訪問看護ステーション様から「小田原福祉会さんなら安心して任せられる」と、多くの利用者様をご紹介いただけるようになりました。
ーーー最後に、貴社の今後のビジョンや、定期巡回が切り拓く介護業界の未来についてお聞かせください。
(時田様)
今後は、AIやITの活用を本気で考えなければなりません。
数値管理や計画書作成といった管理業務はテクノロジーに任せ、人は本来やるべき「心に寄り添うケア」に集中できる環境を作りたいですね。
定期巡回は、これからの地域包括ケアシステムの中心を担う、パーフェクトな在宅サービスです。
訪問介護との両立で悩んでいる事業所には、躊躇せずこちらに一本化する決断をしてほしい。
利用者、職員、そして社会にとっても「三方よし」の結果に繋がると確信しています。
ーーー本日はお忙しい中ご対応いただき、誠にありがとうござい
「スマケア」は、業務支援システムとして日々の業務を効率化するだけでなく、これから定期巡回事業を立ち上げたい事業者様のサポートも行っています。
以下資料より、定期巡回サービスの理解を深め、地域を支えるサービスの提供を、スマケアとともに行いませんか?
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